香りと記憶
香りが脳に記憶されているということをなかなか普段の生活で考える機会は少ないかもしれません。
しかし、香りは脳に記憶されているのです…人は呼吸をする事によって様々な香りを無意識のうちに記憶します。
好きな香り、嫌いな香り、何となくホッとする香りやにおいが皆さんにもきっとあることでしょう。
たとえば、自分の家に帰ってほっとするのは、自分の家のにおいを無意識に認識しているという側面も大いにあるといえます。
また記憶と結びついた香りへの反応…他人のつけている香水の香りでどのブランドかあてることが出来たり、単純なことでは、今晩のおかずがカレーだということを玄関でにおいを感じて判断することもできますね。
また外に目を向ければ、春の沈丁花の香り、初夏の土のにおい、など季節の香りを感じることもそのひとつといえるでしょう。
日本にもある香りの文化
さて、アロマテラピーというとなんだか西洋独自の文化に聞こえますが、日本人にとっても身近なアロマテラピーがあります。
それは、日本人の香りの文化…香道など昔から香りに親しむ文化、子供の日に菖蒲湯、冬至に柚子湯、みなさんもきっと経験されていることでしょう。
そのほかにも、昔から利用されてきた生活の知恵として…ヒノキのまな板、ヒノキ風呂、風呂桶など古くから伝わる植物の薬理効果を応用して生活や健康に役立てる。
これらも立派なアロマテラピーです。
アロマテラピーの歴史
アロマテラピーという認識や、その歴史と発展は西洋から始まりましたが、けして私たちの生活とかけ離れたものではないことを理解いただけるのではないでしょうか。
ここからは時代をさかのぼりアロマテラピーの歴史を少しだけひも解いてみたいと思います。
人々はすでに紀元前2000年には芳香植物の応用方法として殺菌効果のある植物を燃やして疫病の蔓延を防ぐために使用したり、宗教の儀式で用いていたという歴史があります。
またエジプトではミイラなど死者の腐敗を防ぐ術として防腐効果のあるミルラなどを利用していました。
また、クレオパトラが魅力的だったのはバラのお風呂にはいったり、化粧品として香油を用いていたということがあげられています。
香り文化は18世紀になりフランスを中心に進化し発展するのですが、一旦は科学的で近代的な薬学が中心となり、かなり影を潜めてしまいます。
しかしフランスの化学者が実験中にラベンダーで治療し、その薬理効果が研究されるなど、再度芳香植物から抽出した精油が見直されるようになり、現在私たちがアロマテラピーとして医療や美容そして心と体の健康に用いる基礎がつくられています。
ここで「アロマテラピー」をまとめてみると、植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)を用いてホリスティックな観点から心と身体に働きかけることにより、免疫力を高め、様々な不調を癒し、病気の予防や回復を促進する自然療法として紀元前から用いてきた健康法となります。
エッセンシャルオイル(精油)とその働きについて
さて、先ほどのアロマテラピーの定義に「エッセンシャルオイル(精油)を用いて」とありますが、この精油とはどのようなものなのでしょうか。
アロマテラピーで用いられるエッセンシャルオイル(精油)は植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種、樹脂などから抽出した100%天然のオイルで活性成分を含有した揮発性の芳香物質です。
その精油に含まれる一つ一つの成分がそれぞれ独特な香りと機能をもっています。
精油はポプリオイルなどの合成香料とは別のもので、科学的に作られた石油のような油でもありませんし、植物油や脂でもありません。
本来植物が生きていくために、昆虫から身を守ったり、水分を蓄えるために分泌しているものなのです。
精油が抽出される植物は、一つ一つが独自の成分で構成されていて、それぞれの成分が違う働きをします。
このため、精油に含まれる成分の違いによって、リラックスやリフレッシュ、気持ちが明るくなるなどの心理的なアプローチや成分の薬理効果により、心と身体に異なった生理作用を起こさせるのです。
ではどのようにして精油成分が人の心と身体に働きかけるのでしょうか。
そのメカニズムは大きく分けて2つに分けられます。
1.嗅覚として脳、神経系に伝わるもの…鼻から吸い込んだ香りは脳の中の感情や本能や記憶に関わる部分に到達します。
2.皮膚から血液の循環により吸収され全身に伝わるもの…この経路はさらに呼吸器、消化器、皮膚の3つに分かれます。
精油の活用方法
ここからは、私達の生活の中で簡単に取り入れることができるいくつかの精油の活用方法を、例をあげて紹介いたします。
- 芳香浴…ライトやランプなどでお部屋に香らせたり、キャンドルから香りを楽しんだり、スプレーをつくり芳香浴を楽しむ
- 沐浴…お風呂の浴槽に数滴たらして香りを楽しむ(全身浴、部分浴、半身浴)
- 吸入…ティッシュペーパーなどに精油をつけて吸入する方法 洗面器に熱いお湯をはり、蒸気吸入する
- トリートメント…植物油などでエッセンシャルオイルを希釈(薄める)して、身体をトリートメントし、健康に役立てる
安全に有意義に精油を活用するために知っておくべきこと
特性や目的に応じた精油選びが出来るように精油の知識をもつことは大切なことです。
それを理解したうえで、ブレンドの奥深さを楽しんだり、自分の感性に従った香り選びをしましょう。
アロマテラピーをホームケアとして楽しむ場合は、直接肌につけたり飲んだりはお勧めできません。
最低限の注意事項を記しておきますので、参考にしてください。
- 原液を直接皮膚に塗ったりしないようにしましょう。
- 精油を飲用しないようにしましょう。
- 火気に注意し、お子さまやペットの手の届かない冷暗所にキャップを閉めて保管しましょう。
お勧めの精油 リラックス
ラベンダー Lavender (Lavandula angustifolia)
<シソ科 水蒸気蒸留法 花や葉から抽出>
すぐれた鎮静効果があり、ストレスなどで疲れた心と身体をリラックスさせてくれます。身体のバランスを整えるほか、スキンケアにも伝統的に使われる精油です。
オレンジ・スイートOrange Sweet (Citrus aurantium var. dulcis)
<ミカン科 圧搾法 果皮から抽出>
緊張をゆるめ、リラックスさせてくれる親しみのある香りです。不安を鎮めて、気持ちを前向きに明るくしてくれます。